高血圧と認知症 ~血圧管理は未来の脳を守るために~

高血圧は脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などの重大な病気の原因となることは以前のコラムでもお伝えしましたが、それだけでなく、将来の認知機能にも関係することが分かっています。
日本高血圧学会も2026年8月に 「高血圧と認知症」 の啓発資料を公開し、高血圧を適切に管理することは、循環器病の予防だけでなく、将来の認知機能を維持するためにも重要であることを呼びかけています。
高血圧はなぜ認知症と関係するのでしょうか?
脳には多くの血管が張り巡らされており、神経細胞が正常に働くためには十分な血流が必要です。長期間にわたって血圧が高い状態が続くと、脳の細い血管にも負担がかかります。その結果、脳の小さな血管が傷ついたり、脳の血流を保つ力が弱まったりすることで、徐々に認知機能に影響を及ぼすことがあります。
また、アルツハイマー病の原因物質として知られるアミロイドベータは高血圧などにより脳の血流が弱まると脳に溜まりやすくなります。
だからこそ、血圧を適切に管理することは、「今の血圧を下げる」だけではなく、将来の脳や血管を守るためにも大切なのです。
高血圧を治療すると認知症を防げる?
ここで注意したいのは、血圧を下げれば認知症を完全に予防できる、という意味ではないということです。
認知症には、加齢、遺伝的要因、糖尿病、脂質異常症、喫煙、運動不足など、さまざまな要因が関係しています。その中で高血圧は、適切な治療や生活習慣の改善によって管理できるリスク因子の一つです。そのため、血圧を適切に管理することは、将来の認知機能を守るために重要だと考えられています。
「朝の血圧」に注目してみましょう
日本高血圧学会が今回の啓発資料で特に紹介しているのが、朝の血圧を測り、朝の血圧を130mmHg未満にすることを目指す 「血圧朝活」 です。
朝は血圧が上昇しやすく、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患が起こりやすい時間帯でもあります。そのため、普段から家庭で朝の血圧を測定し、自分の血圧を知ることが大切です。「朝起きたら血圧を測る」という小さな習慣が、自分の血圧状態を知るきっかけになります。
家庭血圧を測ってみましょう
血圧は、病院で測るだけではなく、普段の生活の中で測定することが重要です。
特に朝の血圧を記録しておくと、診察時にも血圧の状態を把握するうえで役立ちます。
朝は、
● 起床後1時間以内
● 排尿後
● 朝食前
● 服薬前
● 1~2分程度安静にしてから
測定することをおすすめします。
毎日完璧に測定する必要はありません。
まずは「朝、血圧を測る」という習慣を作るところから始めてみましょう。
血圧を管理するためにできること
血圧の管理には、毎日の生活習慣も大切です。
● 塩分を摂りすぎない
● 野菜や果物を適度に取り入れる
● 適正体重を維持する
● 定期的に体を動かす
● お酒を飲みすぎない
● 禁煙する
● 十分な睡眠をとる
● 家庭で血圧を測る
これらを無理なく続けることが、血圧管理につながります。
また、生活習慣を改善しても血圧が十分に下がらない場合には、降圧薬による治療が必要になることがあります。
「血圧を下げる」ことは、将来の健康を守ること
2025年に改訂された日本高血圧学会の 「高血圧管理・治療ガイドライン2025」 では、降圧目標として、原則として診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満が示されています。ただし、年齢や持病、治療による副作用などを考慮し、個々の患者さんに合わせて治療することが大切です。
高血圧の治療は、単に血圧の数字を下げるためだけのものではありません。
脳卒中や心臓病、腎臓病を予防し、そして将来の健康な生活を守るための治療でもあります。
日本高血圧学会が呼びかける「血圧朝活」をきっかけに、まずは毎朝の血圧を測ることから始めてみませんか?
「血圧が少し高いけれど、症状がないから大丈夫」と放置せず、ご自身の血圧を知り、適切に管理していきましょう。血圧について気になることがあれば、いつでもご相談ください。
参考:日本高血圧学会「高血圧と認知症」啓発資料